上下の歯を個々にかみ合わせるためには最適な治療法です。通常反対咬合では2年ほどの治療期間を必要とします。しかし、歯列矯正だけでは外見上は限界があり、下顎の歯槽骨がほとんど後退しないために、受け口の状態はさほど変化しません。またオトガイ唇溝(下口唇の下のくぼみ)が浅いままで、下口唇は突出した感じです。
反対咬合の代表的治療法として“下顎分節骨切り術”が挙げられます。この手術の概略は、反対の咬み合わせはそのほとんどが左右の4番までの歯、すなわち前歯の8本です。そこで両端の4番の歯を抜歯して、3,5番の歯の間に隙間をつくって、残った前歯の6本を一塊で後退させる治療法です。手術時間は1時間30分程度で、短時間での改善が期待できます。
利点:
手術が短時間で終了し(1~2時間程度)、入院の必要がない
5番以降の奥歯の状態は変化しないため、手術直後より噛み合わせには困らず、翌朝より食事が出来る
術後の矯正は必ずしも必要がない
欠点:
3,5番の歯の間に、隙間ができる。ときに目立つため、歯科的な治療が必要となる。セラミックによるブリッジ、歯列矯正などの治療を選択する
前歯はひとつひとつみると、咬み合わせが完璧ではない。あくまで一塊として適切な位置に後退させるのが外科手術での限界である、その意味では、術後に歯科矯正を行うのがベストの治療である。
術前のセファロ(レントゲン写真)、歯列模型による詳細なプランが必要になります。 オトガイの突出を合併していることが多く、その場合にはオトガイ後退、短縮術なども同時の行って、下顎(オトガイ)全体を後退させることになります。
切開
粘膜切開および剥離予定部にエピネフリン添加局所麻酔薬を注射します。
両側4~4番まで下口腔前庭粘膜に水平切開を加え、その後4番の歯に沿って歯槽骨部で粘膜に縦切開を加える。縦切開と先の横切開とを連結します。
剥離
切開部から粘膜骨膜弁を剥離します。オトガイ部の剥離は、オトガイ神経血管束に損傷を与えることなくオトガイ孔を確認します。
抜歯
骨切りに先立ち、両側の4番(小臼歯)を抜歯します。
骨切り
縦の骨切り線相当部の舌側歯肉骨膜を粘膜剥離子を用いて剥離し、3mmラウンドバーでで骨切り線の両側の歯根を損傷しないように骨切りを行ないます。
オトガイ部の水平方向の骨切り線は、歯根部では最長(3番)の歯根尖からさらに5mm以上離れた下方に設定し、サジタルソーで水平骨切りを行ないます。 縦の骨切り線と水平骨切り線との連結部は細いフィッシャーバーで十分骨を切断し、骨切りしたセグメントを可動化します。
骨切り後の調整、歯牙結紮
縦の骨切り部の余剰な骨を細い骨バーで予定した咬合が得られるように削除、調整します。 術前に模型上で作製した予定の咬合状態が無理なく得られることを確認したあと、0.4mm鋼線で歯に結紮、固定します。
プレート固定
次にチタン製マイクロプレートにて骨片の固定をします。 セグメントの移動後のオトガイ部の間隙に、オトガイ下縁部から採取した小骨片を調整して挿入します。
閉創
粘膜骨膜弁を元に戻し縫合閉鎖し、手術を終了します。